思考の対立

ノーマン・ビンセント・ピール(Norman Vincent Peale)は、トランプ大統領が師匠(guru)と仰ぐ人だ。1952年にベストセラー「ポジティブシンキングの力(The Power of Positive Thinking)」を書き、それ以来15の言語に翻訳されている。彼の教義は、『神が望んだ方法で成功するためには、自信を持つことである』つまり、自信をもって積極的に考えることが神が望むことであり、そうすれば必ず成功すると言うことである。トランプ大統領の父、フレッド・トランプは、この教えに惹かれ、その教えによって成功したのだ。そして父を親友と言う、ドナルド・トランプ大統領は、この教えを引き継いだ。

 

僕はこのことを知り、トランプ大統領の言動の根拠を知る思いがする。トランプ大統領には、その背後に「神の意志」を常に感じる。トランプは、その神の意志を万人に与えた偉大なる国アメリカへの愛国心と、それを作り上げた先達に対する限りない敬愛の念を持っている。そしてそれは神とアメリ憲法への忠誠にしっかりと結びついている。

 

実は、このノーマン・ビンセント・ピールとそっくりの考えをいう日本人がいる。それは、中村天風である。彼は、神ではなく宇宙霊と呼ぶが、その存在はピールと同じだと思う。即ち、宇宙霊は全てのものをより良くせんと、常に公平なる態度を持つ。そして、正しい心・勇気ある心・明るい心・朗らかな心という、積極的な心を持つ人に、その全能の力を与えるのである。

 

両者とも、全能の存在は人間に、その全能の力を与えようとしているといっているのだ。

 

これに対し、その全能の力を持ち得る存在の人間を否定し、コントロールし、支配しようとする思考がある。人生は辛い、人間は愚かだという宣伝をし、自己否定させ、この世の地獄を肯定させる考え方だ。この考え方を宗教が教義として押し付けてきたと主張するのは、ロシア系女性哲学者アイン・ランドである。そして、その支配の構造を打ち破るためには、自分自身の頭で考える人間になる必要があると言う。偉大なる建国の父達が作ったアメリカが、行き詰まっているのも、自ら考える(thinking)ことをやめたからだと言う。

 

アイン・ランドとは違った視点で、ナポレオン・ヒルも同じ様なことを言っている。彼は、著書「悪魔を出し抜け」の中で、悪魔達の人を操る手段は、人間を「流される習慣」に陥れることだと言う。自分の頭で考えなくなった人間は、悪魔が簡単に支配できるのだ。そして人間を流される習慣に陥れる手段は、食欲と性欲など人間の弱点に漬け込むことだと言う。

 

どうであろうか、アイン・ランドナポレオン・ヒルに共通するのは、自分の頭で考えなくなった人間は、人間が本来持っている力を発揮出来ず、神の祝福を受けず悪魔に支配され、堕落していくと言うことなのだ。

 

僕は、Positive Thinking(積極的な考え方)と自分で考えない(流される習慣)とは、裏表だと思う。今こそ、自分の頭で考える習慣をつけるべきことなのだ。

 

実は、今、世界で起きていることは。自分で考えることをやめさせられた世界から、自分で考える習慣を取り戻す戦いなのだ。ワシントンECの集会と、それを阻止せんとする議会暴動の戦略がこれを示している。多くの人間がその戦いに参加することを、トランプ大統領は、時間をかけて待っていた。しかし、もうタイムリミットなのだ。これからは、自分の頭で考えない習慣に染った人達が、一気に駆逐されることになる。

 

人類史上、何百年、いや何千年にわたる、思考の南北戦争なのだ。そして、自ら考える頭を持つ人の世の中が出現することになる。