僕の身体

風呂に入りながら、ふと気がついた。今洗っているこの足は僕の足か? いや、これは”僕“の足じゃない。僕が、宇宙から自然から天から借りた物なのだ。僕は、この足を、借りているんだ。

 

そうだ、この足がなければ、どこにも行けない。いつも身体をザッと洗って済ませている僕は、この足が、もらった物、頂いたものだと気がついて、思わずのけぞった。足をぞんざいに扱っていた自分が、急に萎んだ。自分の足だと思い込んでいた僕が、その身を隠した。

 

足から僕は遠のいて、その足を見た。これは自分ではない。使わさせてもらっているんだ。借りたものなのだから、大事に、綺麗に、丁寧に、扱わなくてはいけないんだ。

 

この手も目も耳も、お腹だって、僕のものではない。頭だって借りているんだ。脳があるから、”僕“がわかるんだ。僕のことを伝えられるんだ。おいおい、その”僕“って何だ。何処にいるんだ?

 

でも僕は今ここに”いる“。全ての借主として。この身体がなくなったら、この借主の僕は、僕という意識を失って、宇宙の果てに戻るんだ。