音楽は心を強くする

僕は、この令和元年5月からマリンバを弾き始めた。学生時代以来、結婚しても、ずっと飾りとして、台として、部屋の隅にあったマリンバを弾こうと思った。パイプにこびりついた誇りとさびを落とし、鍵盤の木片を新しい紐で固定した。仕舞い込んでいた楽譜やノートを取り出した。本当に久しぶりでした。

 

そのきっかけは、母親がホームに通い始めた時の思いです。施設の老人たちの生気のなさに、悲しさを覚えたのです。元気に人生を送っていた時は、きっと凛としてしっかりとしたお母さんをやっていたと思われるお婆さんたちが、うろたえてプライドを失っている様子が哀れだった。そのままでいいんだよ、自信を失うことないんだよ、と言いたかった。ふとその時、僕にできることがあるとすれば、マリンバを弾いてあげることではないかと思ったのです。部屋の隅に眠らせているなら、引っ張り出して役に立てたいと思ったのです。

 

まだその実行はできていないけど、僕はマリンバを弾く時は、施設のお婆さん達に聞いてもらうような気持ちであります。音楽は色々あるけれど、人の心を慰み穏やかにし平穏にするものでもあります。マリンバの音は、素朴で優しさがあります。その特徴を生かせる編曲をしながら、いつの日か、ホームでも弾けるようにしたいと思っている。

 

そしてなにより、そういうことが自分にもできるという気持ちが、僕自身の心を穏やかにしてくれる。不思議な力を与えてくれるのです。それは新しい発見でもありました。そして、そのような基礎を教育してくれた親に感謝の念がわいてくるのです。