人間を破壊する恐怖の心

人を破壊する最大の敵は恐怖の心ではないか。恐怖というのは、生命が本来持っている個体としての死を恐れる心だ。人は意識を持つ生物であり、その意識によって行動を制御する唯一の動物である。その行動の根源を停止させる力が恐怖にはある。

 

健康を失う恐れ、将来の生活に対する恐れ、人や社会との関係を失う恐れ、人は色々な恐れを持っている。恐れにより自己改善の方向へ向かうなら、恐れもまた有効である。しかし、多くの場合、防衛する心のみとなり、委縮し、生命力を失う方向へと向かう。

 

例えば、「今日ちょっと顔色が悪いね」とか、何気ない一言が不安を増強し、さらに悪い方向に向かう。人間とは弱いものである。不安や恐れが根付いてしまうとそこからなかなか抜け出せなくなる。だから、僕はなるべく、こういう不安や恐れを誘う言葉を聞かないように心掛けている。万一聞いてしまったら、「…という人もいる」と付け足す。これで大きく違う。

 

また、健康に関するテレビ報道もあまり見ない。健康ブームというのは、前向きの知識としては健康増進であるが、意図があるなしに関わらず、病気への不安感を植え付けるものでもある。だからこういう報道は、改善する方法を知るのと、健康への恐怖心を生み出すのと、どちらがいいのか考えながら見ることにしている。さらに、悪意をもって、恐怖心や不安感を植え付け、商売につなげようとする意図を感じることもある。

 

僕は、不安や恐怖が人間を破壊するものであることをよく理解したうえで、それから身を守る社会生活を送ることも大切と思っている。