僕達団塊世代も含め、日本には戦争を体験した人が殆どいない。だから、戦争に反対するとしても、頭の中に描いた戦争をもとに、反対しているのだ。実感を持った「戦争」に反対しているわけではない。だから、僕たちの戦争反対は、目の前で家族が殺されたり、銃弾や戦車の恐怖を味わった人の、戦争に対する憎しみとは異質なものだと思う。
しかし残念ながら、戦争に反対する認識の出発点は後者なのだ。残虐な体験がなければ、本当の意味で戦争反対という意識の元がないということになってしまう。また、戦争をやっている人々は、それを「やりたくて」やっているわけではない。最後の手段として戦争を選ぶと感じている。
僕たちは、武器を廃止しようという前に、武器を持たざるを得ない人々の、どうしようもない気持ちを「理解」する必要がるかもしれない。彼等からすれば、僕たちの戦争反対は、ちゃんちゃらおかしいことになる。戦争反対は、その残虐さを実感していなければ説得力を持たない、とは何とも皮肉なことであろう。
僕はこのことに対し、明快な答えを持ち合わせてはいない。ただ、次の2つのことが大切と考えている。一つは、世界の情勢をできる限り正確に情報収集し理解すること。2つ目は、人間という存在についての思索を深めていくことである。この2つを進めながら、その時点での最善の回答を用意していくことだろう。そしてそれが、憲法の自衛に関する考え方にもつながっていくと思う。
