結婚適齢期の娘へ

僕は、貴女のお母さん、つまり僕の妻と出会って良かったと思っています。結婚してそろそろ40年、なんだかんだあっても、互いに思いやって生活できるようになりました。つまり貴女は、愛し合う2人から生まれた子供です。でもこれは、今だから言えること、長い間の迷いと苦悩の結果です。

 

女から見て、理想の男は、最初からはいません。できる事は、理想の男に近づけることだと思います。僕も結婚したでは、妻のことをよく理解せず、彼女を苦しめてきたと思います。何しろ、生活環境が全く違う2人でしたから。

 

僕がお母さんと結婚したきっかけは、笑顔がとても素敵だったからです。それ以外は未知数でした。感じ方も考え方も、全く違っていました。僕が良かれと思ってしたことも、彼女にとっては十分ではなく不満が残るものでったのです。彼女の不満を理解することができず、不満が存在することすらわからなかったのです。

 

でも僕は、長い時間をかけて、彼女からいろいろなことを吸収しました。冗談を言うこともできるようになりました。ふざけてからかうことも上手くなってきました。これによって僕は、人間としても幅ができたし、人とのコミュニケーションがうまくできるようになってきました。何よりも、妻との会話が少しはうまくできるようになってきたのです。

 

これによってようやく、互いに心の内を感じあうことができるようになって来ました。互いに相手を思っていること、誠実に生きようとしていること、これらを感じられるようになってきたと思います。何かし損じても、最初から悪意があったとは思わなくなってきました。ここまで来るのに40年近く時間がかかったのです。

 

男は、女によって育つと思います。最初は母から、次は妻からです。でもそのためには、真面目なこと、前向きに生きようとしていること、すぐ怒らないこと、そして辛抱強い事が必要です。最初から理想の男はいません。辛抱強くそれができることを願ってやみません。