自然の恵み

10月も末になり、もう晩秋になるのか。街中の落葉樹は赤や黄の葉を落とし始めた。僕はいつも公園の中を通って出社しているが、昨日ふと足元に落ちている葉を見て、びっくりしたのだ。それは赤い落ち葉であったが、宝石のようにきれいに見えた。一枚ではない、あちこちにその宝石の光がある。

 

僕は今まで、気づかずに出社を急いていた。いつもの風景であった。しかし、その時、こんなにきれいなものが落ちていることに驚いたのである。僕はその中の2枚を拾ってノートに挟んだ。帰宅時にもっとゆっくり見ようと思った。

 

ノートに挟んだその落ち葉は、輝いたまま静かに収まっていた。自然はこんなにも美しいものを与えてくれるのだと教えられた。思い起こせば、小さいころ自宅の周りには自然がいっぱいあった。そこは自然の宝庫だったのだ。美しい恵みの宝庫だったのだ。

 

翌朝の勤務明け、帰宅時早速その公園にさしかかった時、なんとそこは、きれいに清掃されていた。何人かの清掃員が放棄を立て、ビニール袋に落ち葉を掻きこんでいる。あーあー、それそれ、ゴミにして捨てないで、と僕は心で叫んだ。

 

僕はまだ残っている落ち葉を求めて、悲しい思いで、何枚か拾い集めた。こんなに美しいものを、こんなに豊かなものをゴミにしてしまうなんて、この世界はなんて堕落してしまったものだと悔しさでいっぱいであった。

 

正直言って、僕が気付くのが遅かったのだ。そこに心が向かなかったのだ。次回は、今度は少し余裕をもって出社し、宝を探そうと思っている。