心を伝える

心を伝えるというのは難しい。相手のことを思っていたとしても、言葉一つ、状況如何でその真意は伝わらない。下手すると、伝える側もその伝えるべきこと間違っている可能性もある。

 

人は、その肉体、その環境、その運命に支配されている。肉体を通して色を観、声を聴き、その環境の中で苦しみ、運命を恨む。その「支配された人」に心を伝えるのは至難の業ともいえる。少なくともその「肉体」に縛られた「人」は、その制約の中で感じているしかない。肉体を離れたら、その感覚も、意思も感情もないのかもしれない。逆に、肉体があるからこそ、感情を表し、意思を伝えられるのでもある。

 

僕は、心は、そのような制約に縛られた「人」に対して伝えるのではなく、その制約の配下にいる「魂」に伝えることが正しいのではないかと思ってきた。魂はその肉体や環境の制約の中で、本来の目的を果たさんがゆえにもがいている。だから、その魂に向かって自分の魂のエネルギーを、言葉や表情という道具を使って伝えるのだと考えるのが正しいのではないか。

 

僕はホームにいる母親を見舞いながら、このように思った。