人の尊厳を弄ぶな

去年12月30日、武漢の眼科医の李文亮は約150人が参加するグループチャットで「華南海鮮市場で7名がSARS重症急性呼吸器症候群)にかかり、われわれの病院の救急科に隔離されている」という情報を発信した。しかしコロナウィルス隠蔽を計る武漢当局は、亮医師を1月3日に管轄区域の警察の派出所に出頭させ、「違法問題」に対する「訓戒書」に署名をさせた。その後、感染の情報発信をした李医師自身も、コロナウィルスにより殉職してしまう。武漢当局がこのような処分に出たと言いうことは、当然中国政府の意向を忖度したからで、中国政府もそれに対し何ら処置をしていない。この時点では中国政府も武漢東京の行為を認めていたということになる。

 

ところが、感染が蔓延し、武漢封鎖となる状況において、感性防止にミスがあったとして、中国政府は武漢当局およびその湖南省のトップを交代させている。これは、ミスを現場に押しつけて自身への非難を回避する、中国政府の常套手段であり、いつものことだと思っていた。

 

しかし、中国政府は5日、李文亮医師らを表彰すると発表した。これはなんであろうか。この発表を聞き、一転、僕は怒りを覚えるようになった。中国政府は、その隠蔽体質による感染拡大の非難の矛先をかわすために、李医師らを利用しているのである。そもそも、李医師はそれを喜ぶであろうか。真摯な行為を踏みにじられ、自らも命を落としたうえで、政治利用されたら、それを拒否してもおかしくない。

 

僕は、個人の純粋な誠意を踏みにじるこのようなやり方に、断固反対をする。隣の国であるから、仲良く協力していくことは当然であるが、ここまで、個人として尊厳を踏みにじるなら、それは改めていくように強く要望したい。

 

中国国内でも、この問題をきっかけに、中国政府の体制そのものへの批判が出てきたという。単に抑え込むだけでは、中国政府自身の存続にも影響すると感じる。