体に学ぶ

僕は20代に腎臓病で長期入院療養をした。この時の体験は今も自分の土台となっている。そしてその時読んだ何冊かの本も心の羅針盤となっている。その中に、常岡一郎の本も何冊かある。

 

常岡一郎は、慶応大学在学中に結核に罹り、闘病生活をしている。その時の体験を元に、闘病五千日や、病に学ぶ、逆境に学ぶ、運命に学ぶ、自然に学ぶなど学ぶシリーズを書いている。いずれに著作も、現在の境遇に負けず、更にはそこから得るものを学び取っていこうという、前向きで積極的な姿勢で貫かれている。晩年は参議院議員を務め、90歳の天寿を全うしている。

 

僕は、常岡一郎から、どんなことでも後ろ向きにならず、積極的に生きる姿勢を学んだ。例えば、病気は自分を苦しめるためにあるのではない、自分のために必死で闘っている体の姿なのだ、という考え方です。この考え方の基本精神は、身体は常に良くなろうとしている、という体の性善説です。健康を考えるがゆえに、身体の状態を細かく分析し、そこばかりに目が行ってしまうと、体全体としての視点がなくなってしまう。健康を考えることは良い、でも体は良くなろうと一生懸命に頑張っている、ということを認識すべきと思う。

 

このような観点から、僕は、自分の健康状態を自分の体に聞くようになった。体に聞く、つまり、体に学ぶということだ。

 

腹の調子が悪ければ、腹が何を欲しているのか、どうしようとしているのかを考える。咳が出やすいなら、咳をすることで何をしようとしているのか考える。重大な病気になってしまったら致し方ないかもしれない。しかし、その前のちょっとした状態から、体のメッセージが読み取れるのではないか。そのメッセージをちゃんと受け止めてあげれば、体は一生懸命に頑張ってくれると思う。直ちに薬や医者に頼るのではなく、まず自分の体に聞いてみる、そして学ぶことが大切と思っている。