悪魔をだしぬけ、ナポレオンヒル

昨年末にナポレオンヒル著の「悪魔を出し抜け(Outwitting The Devil)」を読んだ。この本は、1938年原稿を書き上げたが、72年間も公開されず、2011年になって出版されたものなのだ。その内容による社会に対する影響の大きさ故に、公開には慎重になっていたと思われる。まさしく、その内容は支配層の構造を壊す驚くべきものなのだ。

 

ヒルは1908年に、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーにインタビューするチャンスを得た。この時、カーネギーから「成功や失敗した人の原因を突き止め、後世の人にも役立つものを書いたらどうか」と提案される。ヒルは自分自身も成功と失敗を重ね、1929年の世界恐慌の時に悪魔の正体を現した始めたことに気づいた。そしてたどり着いた結論がこの本ではないかと思う。

 

本の構成は、悪魔とヒルとの対話形式である。悪魔の存在に気づいたヒルが、その悪魔の弱点を見抜きながら、その手口を悪魔自身に語らせていくのだ。悪魔は、あらゆる手を使って人の心に入り込み、自分がコントロールしやすいように人の心を作り変えていっている、というのだ。そのトリックの根本は、人間に「考えさせなくする」ということなのだ。

 

考えることをやめる→流される人間になる→支配層がコントロールしやすくなる、ということなのだ。その具体的な方法や手口はこの本の中で述べられている。例えば、女が男をコントロールするには、男のうぬぼれをくすぐればいい、性的な誘惑が不可でも必ずうまくいく、という。このように賄賂(人が欲しいと思うもの)を使って意識を支配し、怠惰にさせ、考えることを停止させるのだ。また、恐怖とか失敗によって考える力を失わさせるという手順もあるという。

 

この「考えることをやめさせる」ということが、悪魔の基本なのだ。現代の政治や国際関係を見るような感じだ。

 

では、どうしたらいいのか。ヒルはこの悪魔の誘いを断絶するためには、「どんな時でも自分の頭で考えること」だという。そして、「考える習慣」を作るのだという。このことは、まさに、今の日本の国民に求められていることと一致していると僕は確信する。