坂道で僕の横を涼し気な顔をして、すいすいと電動自転車で登っていく女性を見ました。なにかとても不自然な気持ちになりました。
自動車はクラッチ操作のマニュアル車から、オートマに移行しました。これはとても便利と思います。機械が人間に寄り添って来た感じがします。電動自転車も忙しいお母さんのツールとしてはとても良いものと思われます。
しかし、どう考えても僕にとって電動自転車は自然ではないのです。つらい上り坂があるから、すがすがしい下り坂がある、これが僕の自然です。上り坂が楽だったら、下り坂の解放感はありません。僕は、電動自転車は、子供たちにとっては、坂を下るあの爽やかな気持ちを奪う、節介なツールとしか思えないのです。
ふと、坂道を必死でこいでいる僕の子供の頃を思い出しました。どうしたらへこたれることなく一気にのぼれるか、人や車が来たらどうするか、考えながらペダルを踏んでいまいた。それは、坂を昇ったあと、坂を下る時の気持ちの良さ、風の清々しさを知っていたから頑張れたのかも知れません。
楽をして何かを得ようとするのは、人間の素直な心です。しかしそれを実現した後に、失ってしまうものもあると思います。その失うものを考えるときに、電動自転車はとてもいい対象であるように思います。機械と人間を考える時のきっかけになるのではないでしょうか。
もしかして、すいすいと木登りができるツールができるかもしれない