警備巡回中に回収した落し物の中に赤ちゃんの靴の片方がありました。それは回収箱の中に入っていたのですが、今日見たらなくなっていました。どうしたのかと聞くと、しばらく保管していたが落とし主が現れないので廃棄した、というのです。僕はあわてて、もし廃棄するなら欲しいのですと言うと、清掃の人が探し出してくれました。
幸いなことに廃棄した直後だったので、ごみの中からそれを見つけることができました。シルバーの合皮でつくられた赤子の左足の靴です。
どんな子がはいていたのかな
どんな足、足の指だったのかな
親は生まれたばかりの赤子にどんな思いではかせたのかな
靴の脱げた左足にはどんな靴下がはいてあったのかな
なくなったと気づいた両親は残念な思いをしただろうな
僕もかつてこのような靴を生まれたての子供にはかせていました。忘れかけていた時を思い出しました。使い捨ての時代でこんなものいくつでも代わりを買ってこれます。でもこれはとても捨てがたかった。これをはいていた可愛いその足の指先を想像すると、僕はとても幸せな気持ちになりました。