人間の2つの傾向、消化型と学習型

人間には次のような相反する傾向があると思います。それは、人の言葉に動かされにくい人と、動かされやすい人です。別の言い方をすると、人の意見を自分に取り込んでいく傾向を持つ人とと、人の意見に自分を合わせていく傾向を持つ人です。

 

前者は、つまりまず自分が在って、人の意見を消化し吸収して自分自身の一部にしていくやり方です。後者は、自分の考えは保留して、人の考えに従ってみるやり方です。呼び方として、前者を消化型、後者を学習型とします。

 

僕は、長い間、人がどうやって物事を理解していくかについて考えてきました。そしてそのためには、この二つの方法が必要であるとかんがえています。と同時に、前者、つまり消化型によって初めて納得できるのだ、という事も確認しています。それは、塾の教師をしていた時、子供たちが「分かった」という時の子供達の状態を経験しているからです。それは、頭ではなく、体で分かった状態と言えます。

 

これは、「学ぶ」と「腑に落ちる」の違いです。学ぶとは、まねるから始まります。真似ることによって体に刻み込んでいくことです。これに対し、腑に落ちるとは、体に入る、つまり消化して自らの血肉となる事です。

 

また、例えば、楽器を練習しているとします。楽譜を見て間違わない様に手足や口を動かすのは、学習の段階です。これに対して、暗譜して演奏できる様になってから、自分の感情を込められる様になったのが、消化した状態と言えます。

 

ですから、何かを習得するという場合には、学習と消化の両方がなくてはならないのです。そして、この事は、個人としても、社会としても言える事です。大切なのはそのバランスであると考えています。