胃腸が言いたい事

ストレスがたまると、下痢をすることがあります。神経性胃腸炎という病名もあるのです。僕たちは、この症状を、精神の状態が悪く、それによって胃腸が悪くなっている、と解釈します。つまり、神経や精神が上で、その影響を受ける胃腸が下位の存在なのです。しかし、逆に考えられないでしょうか。胃腸が危険を察し、それを知らせるために体調を崩し、神経や精神に危険信号を発している、と。精神が病むのは結果であって、その原因を胃腸の方が先に察知して精神を異常にさせている、という風に考えられないでしょうか。

 

日本語には、腹で考えるという思想があります。頭ではなく、腹で考えるのです。頭で考えることが過度になると、精神が不安定になり、体調を崩します。その場合日本語では、気を静めるとか腹を据えるとか、頭の活動を体の下へ移動させる言い方をします。頭で考えることは末端の最後の動作であって、その前に体全体が考えているという感覚です。言葉では表せないことを、腹は考え行動をしているのという感覚です。ですから、このような腹で考える日本人は、言葉で考える西欧人からするとよくわからない人となるのです。

 

このような言葉ではっきりと言わない日本人は、世界から見ると劣った性質に見られているかもしれませんが、逆だと思います。言葉では表せない伝えられないことが在る、と言う事を日本人は体で知っているのです。そして、日本の社会はそれを前提として、社会的コミュニケーションをとってきたのです。はっきりと言わないことを肯定するつもりはありません。しかし、言葉では表現できないことは在るのです。これこそ、胃腸が言いたい事、なのです。