暗い人

僕は学生時代は根暗なタイプだった。嫌われたり、いじめられたりしていた訳ではないが、明るくみんなをまとめるタイプではなかった。それでも生徒会のメンバーだったり、文化祭の実行委員をやったりしていた。なんとなく信用されていたのかも知れない。

 

僕はいつも考えている様子の少年だった。人の発言に対しても、すぐに反応できず、どうしてそう言う発言をしたのかと言う点から考え始めるのだ。冗談が通じない奴という事だったであろう。僕もそんな自分が嫌いで、心が閉じてしまうことも多かったと思う。

 

それから僕は頑固だった。友達が面白そうにしていても、自分の好みでないと参加しなかった。参加しても、ぎこちない雰囲気になってしまうことが判っでいたからだ。例えば、麻雀とかカラオケとかどうしても好きになれなかった。麻雀でお金を掛けて、そのハラハラ感でゲームをする事に耐えられなかったし、好きでもない歌を楽しく歌うのが辛かった。お酒は好きだったので飲んだが、タバコは無理に吸うのが嫌だった。学生運動で友人達がいき盛んであっても、何が正しいのか分からず、傍観者であった。

 

そして今、僕はカラオケをやるようになった。冗談も多少言うようになった。歳を重ねて、人の心も少しは感じ取れるようになったのかも知れない。今は、若い時に味わった苦しい思いは消えている。

 

僕は若い頃を振り返えり、それで良かったのだと納得している。あの頃の僕は、一つ一つの言動に、その意味を確認していたのだ。だから人からは根暗に見え、融通の効かない奴だったのだ。でも今は、あの頃の、自分を偽らず押し倒してきた事を誇りに思っている。

 

根暗に見えてもいい、仲間外れでもいい、自分を偽ったりねじ曲げてはいけないのだ。それが正しい事を大人が認めてあげる必要がある。一所懸命に考え苦しみながらも前に進もうとすることが大切なのだ。安倍能成の「正直に生きなさい」と言う言葉の意味が見えてきた。