ダーニングと繕い

ダーニングという、衣服を修理しながら着続ける手法があることを知りました。ヨーロッパでも、まだ衣服が貴重で、簡単に代わりを手に入れることができなかった時代、衣服を繕いながら着ていたと言います。そして、現在でもその伝統は残っているのです。

 

ダーニングは、衣服のほつれたり破れた部分をちょっと太めの糸を使い、カラフルに修繕しお洒落に修理する方法です。その部分を隠すのではなく、むしろ可愛く目立たせて、修復させてしまいます。この方法は、生活に余裕がある人々の教養でもあるのです。衣服を長くき続けながら、味わい深く愛着を持って楽しむのです。

 

僕は、西欧にこの様な文化があることを知りませんでしたが、妙に納得する気持ちになりました。それは、僕がアメリカで友人の住まいを訪ねた時の思い出です。彼のベットは木の手作りでした。不要になった材木で作ったと言います。決して小綺麗なものではありませんでしたが、とても暖かみを感じたのです。ものを大切にするという精神がそこにはあったのです。日本では決してこのようなことはありません。そもそも日本では、ベットは買うものなのです。その様な感覚からすると、彼のベットはとても味わい深いものでありました。

 

また、アメリカの作家であり園芸家であるターシャ・テューダーの庭にも、物を大切にするゆったりとした時間の流れを感じたことがあります。これも次々と消費して、ダメになったら捨てる文化とは違うのです。

 

ダーニングという文化は、この様な精神から派生したものと思います。それは繕って衣服を着続ける、かつての日本の文化とも共通しています。ものを大切にするという精神性は、現代の過熱しすぎた文明を正す力を持っています。そしてそれが、日本だけでなく、西欧文化の精神の中にもあったことを確認し、とても安堵と勇気が湧いてきました。