昭和懐かし

桜木町の駅の階段の側壁に、年代ごとの桜木町駅の写真が描かれている。年代は、2009年、1971年、1950年頃、1923年、1904年である。いつも懐かしい思いをもってその階段を下りている。特に、1950年頃の写真は、心のふるさとを感じる。僕は1951年生まれなので、その頃の桜木町の記憶はないのだけど、ああ、僕はこういう時代に生まれてきたんだなあといつも思う。

 

1950年というと、昭和25年、戦後復興の端緒についた頃である。当時、「横浜駅」であった現桜木町駅は、横浜港に結ばれた日本再興の玄関であった。駅前広場に行儀よく並んだ立派な黒い車には何か毅然とした感があり、バスや市電の姿にも何か活気を感じる。こういう時に生を受けたのだと思うと、僕は何となく喜ばしい思いがする。現在の日本にはない希望を感じるのだ。粗削りだが一生懸命に生きていた日本を感じるのだ。

 

母から、僕は電車に乗ると喜んで、膝の上でピョンピョンと飛び跳ねたと聞いている。その言葉と、この写真の風景がつながるのだ。そしてその頃の記憶にある、父母や家の中の様子、家の周りのの風景や遊んだ場所、お祭りの様子や屋台のおもちゃ、が浮かんでくる。確かに活気があったし、迷いがなかった。

 

昭和初期のグッズが人気を博するのは、こういう思いがあるのではないかと思う。僕はその頃の僕の気持ちを今一度感じたい。この桜木町の1950年頃の写真と同じく、何かエネルギーを感じるもの。そんなものを発見したいと思っている。