僕は警備員です

僕は警備会社に勤務しています。今年で10年になります。入社した時は右も左もわからず、すべてが新しい体験でした。不安でした。でも経済的に他の選択は見つからず必死でもありました。

 

最初はなにか、“身分を落とす”といった気持ちがあり、友人にも明かすことはありませんでした。でも今はそのような気持ちはありません。いやむしろ警備員である自分が好きになっています。

 

一般に警備員という仕事は、施設管理業務と交通誘導の2タイプがあり、僕はその前者です。そして僕の勤める警備会社はいわゆる大手ではなく、中堅の数百名程度の会社です。

 

最近は若い人も増えてきましたが、多くは第二・第三の職として入ってきた人たちです。いろいろなキャリア・経験・人生を歩んできた人達のるつぼです。それぞれの人生で身に着けた技を出し合いながら、隊として協力して現場を守っていきます。

 

もちろんいろいろな人がいますから、タチの悪い人もいます。しかしそれも含めて何か社会の縮図を見るようであります。一種類の人達で構成されその中で競争しながら生きてきた今までとは全く違います。僕はこの人生のるつぼである、ごちゃ混ぜの集団が心地よいことに気づきました。

 

効率とか脳力とかそういう点でのみ触れ合うのではなく、ある意味、しかたないね、と許しあいながら生きています。もちろん現場を守るという観点では厳しいものもあります。場合によっては職を失います。でもその社会の淵のようなところで、そのぎりぎりのところでは監視しあいながらもお互いを許しあいながら生きていく世界。これは僕にとってはありがたいのです。

 

確かに第一線を離れた社会的にも低くみられる世界かもしれません。身分の保証も給与の待遇も十分ではないかもしれない、でもこのごちゃ混ぜの一つだけには染まっていないこの世界に僕は心の安らぎを得ているのです。