戦争裁判の錯誤

イギリスの政治家ハンスキー卿の名著「戦争犯罪の錯誤」に、以下のような言葉がある。

 

平和は復習から生まれるものではなく、正義から生まれるものである。(p186)

 

戦争を考えるときに、勝った方が正しく負けた方が悪いと言う考え方を、僕は無条件に教育され、受け入れてきたと感じる。しかし、それは間違いであることがよく理解できた。ニュルンベルク裁判も東京裁判も、復習のための裁判であった。

 

今回、ドイツの戦争犯罪をさばいたニュルンベルクの判決において、これは復讐裁判であったと言うことがよくわかった。ヒトラーと言えば、ユダヤ人大虐殺の大罪悪人として歴史で習った。しかし、そのような大惨事を招いたのは、単にドイツが悪かったからでは無いのである。ドイツを戦争に追い込んだ過程がわかると、冒頭のハンスキー卿の言葉の意味が身に染みてくる。

 

ドイツは、第一次世界大戦の大きな負債を抱え、それに耐えながら必死に復興を図っていた。そしてそれにはスウェーデンの鉄鉱石がどうしても必要であった。そのために冬凍結しない海路を確保するために、ノルウェーの中立が必須であった。実は、イギリスがその海路を断つことを模索していたのだ。ちょうど第二次世界大戦前、日本が石油を手に入れることができなくなったのと同じである。

 

戦争が無謀であることはわかっている。しかしそうせざるをえない圧力があったのである。戦争とは何か、平和はどう実現するのか、人類はここで改めて考えなくてはならない。復讐から平和は生まれない、ハンスキー卿の言葉には、魂の力を感じる。

 

復讐や闘争からではなく、全世界が真実と正義から再スタートすることが必要だ。ハンスキー卿は、勝ち負けではなく、正しさを持って自国イギリスの真実の隠蔽を知らせているのだ。まさに今のアメリカで起きている事のように。