僕には忘れられない光景があります。もう30年ぐらい前、僕は東北の一関駅で午前2時頃、札幌行きの寝台特急北斗星の到着を待ってました。ホームは閑散としていて乗客は僕ともう1人ぐらいだったと思う。到着ホーム中程は照明がついているけれど、ホームの端は暗闇の中でした。
そのうちにゴーーという地響きのような音が聞こえてきます。音の方を見ていると、一点の光が見えてきました。光は徐々にはっきりとしてきます。それが機関車のヘッドライトだということがわかったのは、ホームに入ってきた時でした。
驚きの瞬間でした。それはエネルギーの塊でホームに入ってきたのです。寝台車を引き連れて、黙々と不動の姿で現れました。僕はその時、男の姿を見た気がしました。黙って力強く引き連れる姿はそれ以来男のイメージとなりました。
君は長い道を黙々と進んできた
迷いや不平はなく
気負いも焦りもなく
皆が起きている時も寝ている時も
黙って進んできた
男と女は平等にというが、でもやっぱり
男と女はある
男らしさを心の奥にしまっておきたいと
思っている