母からのありがとう

昨日老人ホームへ母を訪ねたたら、突然「さようなら」と言うのです。何か辛いことがあったのか、もう死にたいと思ったのかと、内心驚きました。

 

どこか具合が悪いとか辛いことがあるのか聞くと、そんなことは無い、ただ「始めがあれば終わりもあるよ」という。始めと終わりは繋がっていて、終わりがあるから始めもあるという事を言います。

 

幾分疲れた様子でしたが、辛いとか悲しいとか言った顔つきではなく僕はほっとしました。でも何か心の中に変化があったのかなと察しました。それ以外はいつもと同じで、野菜ジュースを「美味しい」と言って飲みました。

 

そして今朝、ホームへ行くと、「ありがとう」「良一さんありがとう」と言うのです。そんなこと言わなくてもいいよ、元気になってもらうために来ているんだから、と言いましたが、何か自分の死を予期しているのかと思いちょっと悲しい思いがしました。今までは、母に会いに行くと、「会いたかった」とか「待ってたとか」とか「今日は何をするの」とか、僕から何かを求めるような言葉をいうのです。でも昨日と今日は明らかに、母は自分から気持ちを伝えており、今までとは違います。

 

それ以外はいつもと同じく野菜ジュースを飲み朝のクッキーを食べ、おいしいといって目を細めました。僕はいつになく安堵感がありました。そして少しでもその母の気持ちを言葉として残してもらいたいと思いました。