人が互いを許し合うために

文学とは何でしょうか。小説を読みながら、主人公の気持ちになって、悲しんだり、驚いたり、悔やんだりしている事に気がつきました。描写された情景に、自分の思い出を重ねているのです。世の中の憂いを主人公の目を通して感じるのです。これは、もう一つ別の人生を歩いているようなものです。

 

文学以外、演劇や映画でも同じような時空を感じています。時代や国や民族を超え、感じ合うのです。ああ、これこそ、文学を始め芸術の意味するものなのです。僕は、やっとこの事に気がつきました。ですから、この事は、絵画、音楽、工芸、にも通じる事なのです。

 

人類がお互いを認め合い、慰め合い、理解し合い、肩を抱き合う為の心の流れは、芸術によって醸成されるものなのです。僕は気がつきました。芸術の意味、本質が。

 

この時代だからこそ、科学や技術や、もしかして宗教の前に、芸術が存在しなくてはならないのではないでしょうか。白も黄色も黒も、男も女も、神が誰であろうが、人が人として、お互いを許し合うためには、言葉以前の宇宙の感覚にも似た芸による波動が大切なのだと、強く思いました。